電子顕微鏡のある団地=科学クラブが世代をつなぐ

2019/12/09

支援とかケアとかは、若い者が高齢者を手伝うもの、という「一方通行」の発想では、この団地の魅力は理解できないだろう。「要介護にならない団地」と呼ばれる横浜市旭区の若葉台団地で、現役を退いた元大学教授らが本格的な電子顕微鏡を活用し、小中学生らと学ぶ科学クラブを発足。地元の子供たちから「すごい」と尊敬を集めている。

モバイル顕微鏡でチリモン探し。惣田さん(中央)は子供たちの尊敬の的

■要介護にならない団地

若葉台団地(6500戸)は昭和54年に入居の始まった郊外型ベッドタウン。人口は約1万4000人で、65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)は49・4%。つまり、「半数がお年寄り」という状況だ。だが、要介護認定率は12・9%と全国平均(18・4%)を大幅に下回り、シニアが元気な街として注目されている。

「地域コミュニティーの活性化に長年取り組んできた。世代を超えた交流の効果が住民の健康に表れている」と若葉台連合自治会会長の山岸弘樹さんは、誇らしげに話す。

夏祭りや文化祭などのさまざまなイベントが行われ、住民によるサークル活動も盛ん。その1つが「電子顕微鏡でミクロを観る会(ミクロの会)」だ。代表の惣田昱夫(そうた・いくお)さん(74)は静岡理工科大学で微生物を研究していた元教授。4年前、東京工業大学で使わなくなった電子顕微鏡(電顕)を譲り受けたのが、サークル発足のきっかけになった。

電顕が設置されているのは、団地内にある廃校になった旧若葉台西中学校の理科室。東工大の技官だった大木六郎さん(79)が操作やメンテナンスを担当する。地元の子供たちと一緒に、土壌から分離した微生物の一種「放線菌」の形態を観察したり、植物の花粉を観察したりして、理科や科学を好きになるきっかけづくりに取り組む。「ミクロの世界の不思議さにワクワクして、興味を持ってくれるだけでもいい。少しでも子供たちの可能性を広げられれば」と惣田さん。

手慣れた様子で電子顕微鏡を操作する大木六郎さん

■チリモンを探せ

この日行われていたのは「モバイル顕微鏡」を使った「チリメンモンスター(チリモン)探し」。科学コミュニケーション研究所の白根純人さん(44)の協力で開かれた。チリモンとは、チリメンジャコに混じっているイワシ類以外の生物のこと。黒い紙の上に試料を広げて、寄り分けていく。拡大して特徴を確認したり撮影したりしながら「これタコだ!」「これは何?」「うわ、すごい」…。みんな夢中になって取り組んだ。

参加者は多彩で、小学生から70代のシニアまで。車で40分ほどかかる港北区から参加した親子も。自然科学部の生徒と一緒に参加した地元の若葉台中学校の教諭、松下欣旦(よしあき)さん(30)は、「この地域は多世代の活動が活発。専門知識や幅広い人脈を持っている方がたくさんいて、本当に素晴らしい」

高校2年の中村奏輔さん(17)は、中学時代に弟の付き添いで参加し、今はスタッフとして手伝う。「高校では理科部に入っています。ここには学校にはないような器材もあるし、何より惣田さんや大木さんたちの知識や教え方がすごい。なんでも相談できる。自分も研究者の道を進みたい」と話していた。

モバイル顕微鏡の鮮明な画像で子供たちの好奇心をかき立てる

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