村民支える「買い物ツアー」=山梨県道志村

2019/12/24

高齢ドライバーによる事故が社会問題となっているが、地方では車がないと、容易に「買い物難民」になってしまう。解決策として期待されるのが、自治体による「買い物ツアー」。独居の高齢者らが話をしながら、ショッピングを楽しむツアーは、認知症予防にもなりそう。山梨県道志村の買い物ツアーに同行した。

横浜市の水源である道志川と併走する国道413号に沿って東西28㌔に細長く広がる道志村。スーパーや大型店はないが、田舎暮らしにあこがれて移住する人も多い。村民の多くが持ち家で、最後まで自宅で暮らしたいと望む人がほとんどだ。しかし、人口約1600人の村の高齢化率は36%超。移動の生命線である路線バスの便も削減され、暮らしは年々厳しくなっている。

買い物を終えた参加者は、荷物運搬用の村公用車に荷物を入れる

■村民主導のアイディア

そんな村の課題と解決策を話し合おうと平成21年、若い母親から高齢者までさまざまな立場の村民と村職員が集まった。そのときに出たアイデアのひとつが、独居や免許のない高齢者らを対象にした「買い物ツアー」だ。当時を知る村住民健康課の保健師、宮下美恵子さんは「村民が村にお願いするのでなく、自分たちでできることは取り組もうという姿勢で意見を出してくれた」と振り返る。

村が提供するのは、同行する職員とマイクロバス、荷物運搬用の公用車、運転手。参加費は無料で、村は運転手の日当と参加者の保険料、運搬協力者の時給を負担する。ツアーは24年度から始まり、月1回。昨年度は1回平均16・8人(のべ202人)が参加した。

12月のツアーの日、午前9時前に村の施設を出発したマイクロバスは国道沿いの住宅前やバス停付近で次々に住民を拾う。参加者は15人で全員が顔見知り。行き先は前月のツアーの帰り道で決めてあり、午前中はホームセンター、回転ずし店での昼食をはさみ、午後は食料品と衣料品を扱うスーパーと100円ショップ、ドラッグストアを回った。

買い物ツアーを終えて自宅に戻る参加者(右)。村職員や運搬協力者が家の前まで荷物を運んでくれる=山梨県道志村

■実物を見て選びたい

「商品選びの相談や荷物を運ぶボランティアとしてツアーを手伝いはじめ、高齢になった今は参加者」と話すのは、吉田ひろ子さん(71)だ。母親を見送ったのをきっかけに54歳で仕事をやめ、移住ブームに乗って東京都品川区から越してきた。運転免許はないが、家はバス停に近く、診療所や郵便局は歩ける距離。生活に支障はないはずだったが、近所にあったコンビニが閉店し、年々歩くのが辛くなった。生協の配達を利用するが、「やはり実物を見ながら選びたい。買い物はストレス解消にもなる」とツアーを心待ちにする。

正月飾りを見ながら、「もう年末だね」と参加者の会話も弾む。山口い志江さん(87)は3年前、夫に先立たれた。共に経営していた、村に3軒しかなかったガソリンスタンドを休業し、運転免許も返納した。買い物は路線バスを使ったり、隣県に住む娘に頼んだりもするが、「ひとりで家にいると寂しい。ツアーは楽しいから」と毎回参加している。

同行した村住民健康課の嘱託職員、日下部郁美さんは「代金の計算に頭を使い、車内や昼食中も会話が止まらない。引きこもりがちな高齢者にとって、外に出る良い機会」と語る。午後3時過ぎ、買い物袋を手に帰っていく参加者の顔は充実感にあふれていた。

富士山が雄大な姿を見せる

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