要介護者が〝働く〟 自治会はボランティア

2020/03/31

山口県防府市には、要介護の高齢者が〝働く〟介護事業所もあれば、高齢者の困りごとを解決する地区の自治会もある。介護の受け手も支え手も、できることに携わり、助け合う試みが始まっている。新しい「共助」の一端をお伝えする。

デイサービス「WORK ON南」で製作されている「HAIZAI多肉ポット」。道の駅などで販売される

■働くデイサービス

高齢者が通いで1日を過ごすデイサービス事業所「楽さん家WORK ON南」。要介護2の男性(65)が、はさみを使って器用にラベルを切り取っていた。

洗った空き缶にラベルを貼り、多肉植物を植えたら、「HAIZAI多肉ポット」の完成。道の駅や地域のイベントで1個500円で販売する。

「楽さん家WORK ON南」は〝働くデイサービス〟だ。デイサービスにつきものの入浴も、食事も、レクリエーションもない。利用者は商品の制作や、簡単な農作業や草取り、情報誌の配達などに携わる。売り上げは、利用者に謝礼として支払われる。

男性と一緒に作業をしていた管理者の岡将太さん(27)は「けがをしないよう、体調を崩さないよう、気をつけている。利用者から『楽しい』と言ってもらえる作業を増やしたい」と話す。

森泰樹事業部長(40)も、「職員が少し手伝えば、できることはたくさんある」と口をそろえる。昼食は出ないが、みんなで弁当を買いに行ったり、外食に出たりする。食べたいものを選ぶ、自分でお金を支払うといった「日常」を大事にしている。

働くだけでなく、ボランティアにも携わる。防府市が実施する介護予防教室で、利用者の要介護者が会場準備を行っているのだ。市高齢福祉課の中村一朗主幹は、「要介護の人が(自分よりも)介護度の軽い要支援者を介助する全国でも珍しい光景」と胸を張る。

若宮自治会が新設したごみステーション。内田元夫自治会長は「地域のことは自分たちで、という意識を持つことが大事」と語る

■自治会も積極関与

地域の困りごとを解決するネットワーク「ほうふ・てごネット」では、自治会やボランティア組織が活躍する。ケアマネジャーやヘルパーが、高齢者の困りごとに気づくと、てごネットに解決を依頼する。「てご」は地元の言葉で「手助け」を意味する。

同市若宮地区(81世帯)の自治会は、民生委員から「足が悪いお年寄りがごみ捨てに行けない」と聞いて、高齢者のごみ捨てを手伝い始めた。

同自治会長の内田元夫さんは、「若宮は以前は、『おってかのう(いるかな)』と、いきなりドアを開けてしょうゆを借りにくる地域だったが、今は家族が入院しても、近所には黙っている人が多い」と地域のつながりが薄れていることを懸念する。

一方で、地域全体も高齢化しているから、助けられる側だけでなく、助ける側にも目配りする。ごみステーションは当初、地区の両端にしかなかったが、ごみ出しが苦にならぬよう、地区中心部にも増設した。

「92歳の男性が話し相手を求めている」との依頼があったときは、依頼主のほか、70~90代の6人を集めて「若宮語り部会」を立ち上げた。認知症の人が語る昔話は郷土の歴史だ。市職員らが書き留めてくれた。

内田さんは「自治会が、人の役に立たなかったら、存在する意味がない。遠くの親族より近くの他人です」と話している。

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