感謝の言葉に支えられて=千代田区のサポート事業

21 Aug 2019

この仕事を始めて5年となる枝光さん。手慣れた様子で家事を行う。

■住民同士の助け合い

全国の自治体で、住民同士の助け合いのサービスを作るところが増えている。介護や保育の公的サービスだけでは、暮らしは立ちゆかないからだ。近すぎず、遠すぎず。住民同士のそんな微妙な距離感が地域を支えている。

「裏の工事の影響で砂が飛んできていますね」
東京都千代田区の民家で、同区社会福祉協議会(社協)の家事支援事業「ふたばサービス」の支援会員、枝光由希恵さん(44)が雑巾で床を拭きながら、この家に住む男性(78)に話し掛けた。

枝光さんは週1回、男性宅を訪問。掃除や洗濯、庭木の水やりなどを約2時間こなす。通い始めて5年あまり。今ではすっかり手慣れたものだ。男性は「心筋梗塞と脳梗塞を経験し、歩くのも大変。枝光さんには本当にお世話になっている」と感謝する。

ふたばサービスは、住民と支援会員との助け合い事業。社協が区内の高齢者や妊婦などから依頼を受け、支援会員に行ってもらう。利用者は1時間1300円を支払い、うち1200円が支援会員に支払われる。社協の染井達也さんは「活動は年3500件ほど。最近は食事の支度などの依頼が多い」と語る。

手際よく掃除機を掛けてゆく

■週1回、約2時間の訪問

枝光さんと社協との出合いは、子供がおなかにいたときに遡る。夫婦ともに地方出身で、頼れる親類が近くにいない。助けを探していて、社協が子育てを手伝ってくれる人とつなぐ活動があると知った。「幼稚園の送迎をお願いできたし、地域の児童館にも子育てを助けてくれる高齢者のサークルがあった」。

それから数年。子供が小学生になり、そろそろ仕事を、と考えたときに社協を思い出した。「子供の体調や都合で仕事を休む必要が出てくるかも。でも、助けられた分、自分も助けになりたい」と、ふたばサービスを見つけた。

依頼者との間に社協が入ることで、初めての人の家に行く怖さがない。活動は短時間で負担も少ない。「無理しないでやってください」という社協の励ましにも背中を押された。「最初の活動は通院の付き添いでした。自宅からタクシーで病院に行って戻る2、3時間でしたが、『ありがとう』とお茶を出してもらった。私でもできる、と思いました」。

合間をみてお風呂掃除も行う

■適度な距離に安心感が生まれる

テレビが映らない、時計が止まった、新しいオーブンレンジの使い方が分からない。小さな援助をするたびに、「ありがとう」「あなたは何でもできるね」と喜んでもらえる。

「普段の生活では自分のだめな部分に目が行きがち。ですが、お礼を言われると救われた気になる。遠方でなかなか介護できない親への罪滅ぼしというか、親にできない分を地域でやっているというか…」
担当する高齢者からの依頼が途切れると心配になる。社協が間に入るため、直接連絡は取れない。少しさびしいが、その距離感が安心でもあり、過度な負担も負わずに済む。

千代田区の高齢化率は17・79%と東京23区で2番目に低いが、高齢者人口は増えている。大都会の真ん中で、住民が世代を超えてゆるく結びついている。

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