訪れるだけでボランティア=ゴジカラ村

27 Aug 2019

特養からのゴミ出しをする「きねづかシェアリング」の野村武さん=愛知県長久手市の社会福祉法人「愛知たいようの杜」

■愛知県長久手市の特養ホーム

福祉を担う法人のなかには、子供、高齢者、地域住民らが、支えたり支えられたりするコミュニティーをつくるところがある。「仲間」がいて、「居場所」があり、「役割」を持つと、生活には思いがけない楽しみが生まれる。30年以上前から実践する法人を訪ねた。

深い緑が、避暑地に来たような錯覚を起こさせる。愛知県長久手市の猪高緑地に隣接する広大な敷地に、特別養護老人ホーム(特養)、高齢者の通所介護事業所、幼稚園などが点在する。時間に追われない暮らしを目指し、「ゴジカラ村」と呼ばれる。

子供の遊ぶ様子を眺める特養ホームの入所者=愛知県長久手市の特養ホーム「愛知たいようの杜」

■1人3時間半ずつ3交代

退職高齢者のボランティアグループ「きねづかシェアリング」の野村武さん(77)は、週数回やってくる。「夏は緑がみずみずしく、春には桜が咲く。毛虫やムカデもいるが、小鳥がさえずる。気心の知れた仲間がいて、自然の中にいる感じがいい」

中庭のログハウスを〝基地〟に、1人3時間半ずつ3交代で特養などの仕事を手伝う。ゴミ出し、花木の水やり、車いすの洗車。外から来る不審者や、ふらりと出ていこうとする入所者にも気を配る。
「介護現場は人が足りない。でも、現場には介護以外の仕事もある。一線を退いたわれわれが手伝おう、というのが基本です」

仲間の男性(81)も「ボランティアは世のため人のためなんて言うが、実は自分のため。未経験の人には分からない充足感がある」と楽しそうだ。

運営する社会福祉法人「愛知たいようの杜」などが狙うのは、「煩わしい町」。大須賀豊博理事長は、「煩わしさには、人との関わりが生まれる良さがある」と言う。「不具合はあった方がいい。助けてくれる人がどこからか現れて仲間になる。しかも、助けた人は、みんなに感謝されて、逆に元気になる」

特養ホームでお昼寝をして、生きがい支援「どんぐりの杜」に帰る子供と福本喜一さん

■支えたり支えられたり

ゴジカラ村には、「訪れるだけでボランティア」の言葉がある。利用者の家族も、散歩に来る近隣住民も、飼っているヤギも、ヤギに餌やりにくる子供にも役割がある。入所の高齢者が子供の振る舞いに目を細め、ワンパクを叱るときには生き生きとする。

働き方もいろいろだ。敷地内の高齢者住宅に住んで子供を世話する有償ボランティアもいれば、子供が登園する間だけ高齢者施設で働くパートスタッフもいる。人生同様、支えるときも支えられるときもある。

敷地内には、任意団体が「生きがい支援」を掲げ、古民家で幼児を預かる「どんぐりの杜」もある。長久手市に住む福本喜一さん(77)が、小さな子供を抱き上げていた。20年前に「がんこおやじの会」としてゴジカラ村に関わった。「当時は餅つきをしたが、8年前からここを手伝っている」。日進市のパート、中野紀代美さん(46)はママ友と働く。「自分の子供は日々、大きくなる。でも、この子たちは、いつまでも一番かわいい年齢。癒やされ感がある」

大須賀理事長は、「かつては地域が担っていた仕事を、勤め人が増える過程で役場が引き受けた。だが、税収も人口も減る。もう一度、住民に活躍してもらう仕組みが必要だ」と話す。

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