〝ちょいワルじいさん〟の行けてる取り組み

16 Oct 2019

地域のサロンを嫌い、引きこもりがちな高齢男性への働きかけは、どこの町でも悩みの種。だが、そんな〝ちょいヨワ(弱)〟な男性のいたずら心に火をつけ、〝ちょいワル〟なイベントを行う自治体がある。名付けて「ちょいワルじいさんプロジェクト」。行けてる取り組みを紹介する。

「ちょいワルバンド」では90代のベーシストが大活躍(ちょいワルじいさんプロジェクト提供)

■ライブコンサートも

岡山県奈義町の社会福祉協議会(社協)で月1回、「ちょいワルじいさん作戦会議」が開かれる。始めたのは、「7人のサムライ」ならぬ、町内に住む60~80代の7人の「ちょいワルじいさん」。

身体の弱ってきた「ちょいヨワじいさん」を引っ張り出そうと、イベント探しに知恵を絞る。これまで、「介護付きちょいワルの旅」や「ちょいワル同窓会」「ちょいワルバンド」などを企画してきた。

「ちょいワルバンド」では、90代の男性がベースを演奏。「ちょいワル同窓会」では昭和初期の写真を上映。昔話に花を咲かせた。

ちょいワルじいさんの1人、内藤博史さん(86)はその意義について、「家に引きこもる人を、『活動しよるから出てきて』と誘い、少しでも喜んでもらいたい」と言う。仲間の岡本政男さん(83)も、「小さいときから、みんなでワルさして遊んどった。そんな行事ができるといい。いつ、自分も引きこもるかしれんし」と言う。

活動を仕掛けたのは、社協の保健師、植月尚子さん(62)。植月さんによると、男性に介護が必要になる道筋は似通っている。

農業が生きがいの人が、軽トラを田んぼに落とす。運転を止められ、することがなくなる。怒って飲酒する。「女のいる健康クラブはいやじゃ」と引きこもる。じっとしているうちに要介護になる。

菅原直樹さんの芝居「ポータブルトイレットシアター」。菅原さんは「お年寄りには存在感がある。歩いているだけで人生や個性がにじみ出る」と言う。(撮影、南方幹)

■カギは主体性

その連鎖を断ち切るには、本人が「参加したい」イベントが必要だ。「年寄りも文句を言ってないで、自分から動かんといけん」と植月さん。

行けてるネーミングをしたのは、俳優で介護福祉士の菅原直樹さん。「男性はいつまでもワルさをしたいもの」と言い、同世代にしか思いつけない「やんちゃなプラン」を期待する。

そうは言っても、ちょいワルじいさんにとっても、知恵を絞り、意見を出し合い、人を誘うのは大仕事だ。だが、それが元気の源にもなる。2人のちょいワルじいさんは、「それが、一番のメリットかもしらんな」と口をそろえる。

■介護に演技を

ちょいワルじいさんに協力を惜しまない菅原さんは、老いや認知症をテーマにした劇団「オイ・ボッケ・シ」を主宰。平成30年度の文化庁芸術選奨新人賞を受賞した。介護現場に演劇の手法を取り入れるワークショップも全国で行う。

介護と芝居には親和性がある。例えば認知症の人の行動が多少奇妙でも、菅原さんは「否定したり、間違いを指摘したりせず、その人が見ている世界を受け入れ、見えない物を見る演技が必要だと思う」と言う。

認知症の人が「傘」で掃き掃除をしていたら、こう声をかける。「ありがとうございます。おかげできれいになりました。新しいほうきを買ってきたので、こちらを試してもらえますか」。そうすれば、本人は「役に立った。ここには居場所がある」と思う。

意欲や主体性を尊重した働きかけは心身に有効で、お互いに楽しい。相手がちょいヨワでも、重い認知症でも同じだ。すべての人が最後まで、「わるご(いたずら)」できる、楽しい町づくりを目指している。

フォローすると、定期的に
\ケアするWebマガジン『〜から』の更新情報が届きます。/

『〜から』公式LINEに登録 Facebookページをフォロー
Share
LINE