【新春特別インタビュー】レギュラーが語る「お笑い×介護」――「失敗」を「笑顔」に変える“あるある探検隊”の挑戦

2020/01/01

あけましておめでとうございます! 2020年が始まりました。
「~から」をご覧になってくださっているみなさんも、それぞれに新しい年をお迎えのことと思います。みなさんにとって、新しい年が希望に満ちた、そしてとにかく楽しい年になりますように! という願いをこめて、介護施設などでステージを行い、ケアする人も、ケアを受ける人もみんなを笑顔にする活動をされているお笑いコンビ「レギュラー」、松本康太さんと西川晃啓さんに、お話を伺ってきました。

トークの切れ味は10年ほど前の大ブレイク時と変わらない

■アノ騒動のとばっちり!? 「おかえり」の声も…

--昨年(2019年)はどんな年でしたか?
西川 去年はもう激動の1年やったな。
松本 激動の1年でしたね。「闇営業」…って、われわれも、道歩いてたらよく「おかえり~」って言ってもらえるんです。…われわれはやってないですけど!
西川 僕らよく間違えられるんです。
松本 せやね。「おかえり~」とか、「(闇営業の仕事とは)知らんかったもんね」とか。で、僕らがその禊(みそぎ)で、介護(施設での活動を)やってるんだと思われてるんですけど、僕らはその前からやってます。

1998年にコンビを結成したレギュラーは、2004年に「あるある探検隊」で大ブレイク。介護とかかわるきっかけは、松本さんが、「次長課長」の河本準一さんと一緒に介護施設でのボランティアに参加したこと。もともと年配の方にかわいがってもらえるという2人。「介護の勉強をしてみよう」と思い立ち、2014年に「介護職員初任者研修」※1を受け、最初の資格を取得。その後、民間団体が認定する「レクリエーション介護士2級」※2の資格もとりました。そのうえで介護施設などでのステージを重ね、2019年には念願の書籍「レギュラーの介護のこと知ってはります?」(竹書房)を出版しました。

※1 介護職員初任者研修 介護職の「入口」と言われる資格。介護職として働くうえで、基本となる知識・技術を取得する研修で、約130時間の講義と演習の後、修了試験に合格すると資格が得られ、介護を受ける人の体に触れる身体介護ができるようになる。(旧ヘルパー2級)
※2レクリエーション介護士 一般社団法人アクティブコミュニティ協会が認定する民間資格。自身の趣味や特技を生かして、アイデアや着眼点によって、個々の高齢者に適したレクリエーションを提供し、生きがいや喜びを見出すサポートを行う。

松本 それがまた、うまいこと(闇営業問題と)合致してもうてるんですよ。爆笑問題の太田光さんに、楽屋で「本を出すんですよ」と言ったときも、やっぱりそういう認識でいらして、「出すの早いな。あれからまだ1週間くらいしか経ってないじゃん?」って言われて…。「いえ、僕らじゃないんです」っていう(笑)
西川 でも、全体的にはいい年でした。レクリエーション介護がやっと、ちょっとずつ、みなさんに知っていただけるようになってきた。本も無事に発行できてよかったです。
松本 裏をいうと、4年前に話が来たんです。でも、途中でこの本を担当してくれていた、竹書房の編集者さんのお父さんが、介護が必要になってしまった。それで、いざ自分の身内が介護が必要になったときに、ホンマに欲しい情報を出すことにして、作り直したんです。

レクリエーション介護の認知に書籍の発行と昨年はホンマに「いい1年」でした

■お年寄りは人生の大先輩―だから教えてもらう

--介護施設でのステージは、全国で行っているのですか?

松本 全国に行くのは、講演会が多いかもしれない。何年間か、僕らが介護施設でやらしてもらったときのエピソードを盛り込みつつ、僕らは「お笑い×介護」で、施設の利用者さんにしゃべってもらう介護レクをしている、というのをみんなに知ってもらう感じです。介護施設に行かせていただくのは、関東近郊が多いんで、今年は全国のいろんなところに行って(レクリエーション介護を)やってみたいですね。

施設でのステージでは、僕らよりも施設利用者のみなさんにしゃべってもらっています。回想法(高齢者が過去のことを思い出すことにより、かつての問題の解決や生活の活性化、人間関係の構築などに寄与する)というのですが、昔のことを思い出してもらうっていうのがメインですね。「芸人が介護やってる」というと、芸人がみんなの前でなんかやって、施設の方々がそれを見ている、というふうに思われるんだけど、僕らはそうではないんです。

--どんなステージなんでしょう?

松本 芸人の強みって、人を盛り上げること、いわゆる、イジること。普通の人との違いは、人との距離感の詰め方なんです。また「イジり」というのは、信頼関係がなかったら「いじめ」になってしまう。
例えば「きょうの服派手やね~」って、よく知らない人にいきなり言われたら、「なんやの、失礼やね」ってなると思う。でも、仲のいい友達やったら、「え~これ、派手に見える? 安かったんよ。え~買わんかったらよかった」みたいな会話になる。
なので僕たちは、介護施設に行ったらまず、利用者のみなさんとお友達になれるように、「アイスブレイク」をするんです。何をするか。利用者さんが間違えやすいことをいっぱいやります。その間違いをイジって笑いに変える。「失敗してもいい」「失敗しても笑える」という空気づくりをしっかりやるんです。

--「間違い」や「失敗」を温かい笑いに変えていくんですね

松本 そう。あと、「先生」にはならない。生徒は先生に意見しにくいんです。施設の利用者さんって、人生で言えば、僕らの大先輩。昔はすごい役職に就いていて、それが終わってこっちに来ている人だっている。だから僕らは、まず「生徒」になる、という構図を作ることにしているんです。

--施設によって雰囲気もさまざまだと思いますが、その構図はどうやって作るのですか?

西川 雰囲気は全然違いますね。例えば僕らが出て行ったときに、あるところでは、「あー見たことあるねえ。吉本の人か」「漫才師か」とか言ってくれる。かと思えば、別のところでは、「どおも~」って出て行っても、ほんまにみんな、ポッカーンとしてはる時間が15秒くらい続く。それで「ハイ、ハイ!ハイ、ハイ、ハイ!」ってやると、みんなから「はい?」って言われるという…
松本 「にぎやかな人たちですねえ」みたいなね(笑)。最初の頃はほんまドキドキしながら出て行って、びっくりしてました。でも、だいたいは「教えてもらう」というスタンスをとっています。
西川 うん。そうやね
松本 例えば、練馬区の施設に行かしてもらったときは、「僕ら関西の人間なんで、練馬区のことわかんないんですよ。練馬区って治安いいんですか? 悪いんですか?」と聞く。もしも治安が悪ければ、それだけでウケます。良ければ「いい土地なんですね」って言うと、別の人が「ちゃうちゃう、そんないい土地じゃないよ」とか話してくれたりする。
また、僕が「きょうせっかく来さしてもらったんで、何かおみやげを買うて帰ろうと思うんですよ。何がいいですか?」って聞けば、「練馬大根」って教えてくれる。こうやって僕らが「生徒」になって教えてもらう。利用者さんは世間話をしているだけなんだけど、回想法にもなっている。
不思議なことに、利用者さんの1人としゃべっていると、それ以外の方も入ってくるんです。「大根やったら、誰々さんのところがおいしいよ」「いやいや、こっちの方がいい」とか。こうやって利用者さんみんなが「先生」、僕らが「生徒」という関係が作れると、あとは誰かが何かやろうとして失敗して、「違う~」と声がかかっても、「失敗したこと」が「良いこと」になって、笑いに変わるんです。

介護施設でのステージ風景。大事なことは、人生の大先輩である利用者さんに対して「先生」ではなく「生徒」になること

■僕らが一番楽しんでいる…それぞれのやり方で介護を変えていい

--介護にかかわる活動をしていてよかったことは?

西川 介護って「助けてあげること」だと思っていたんですが、そうではなくて「自立のためのサポートをすること」だとわかったことは、発見でした。実際の現場では最初は反応がなくても、終わった時には、おじいちゃんおばあちゃんが、喜んで笑って「面白かったよ」って言っていただけるのがうれしいです。
ある時なんか、車いすのおばあちゃんが、帰る僕らのタクシーの乗り際まで出てきてくれて、泣きながら「また来てや」と言ってくれた。「本当にやっていてよかった」と思いました。
そういう体験って、普通の劇場とか、営業とかではなかなかない。ほんま、もうそんなん、20年ぶり(笑)。みなさんから直接何かをもらうのは、ツイッターとかインスタでもなかなかないもんで。
松本 ないなあ(笑)
西川 ダイレクトな声を聞けるのはありがたいですね。
松本 あとは施設のスタッフの方に楽しんでもらえること。「僕たちも楽しみにしていました」「めちゃめちゃ笑いました」って言ってもらえるのもありがたいです。
あとね、ホントのところ、実は僕らが一番笑っているんですよ。なんというか、ホンマ「ええ失敗」をなさるんです。
例えば「満腹アヒル」(西川さんが、松本さん扮する「満腹アヒル」に「満腹アヒル、何食べた?」と聞いて、唇を手でつまんだ松本さんが「ムームームー!」と答え、何と言ったかを当てる)というクイズをしていて、ある方が「カレーライス!」と答えてくれたとします。

「違う。カレーライスじゃないです~。ヒントは麺類です」
「あ、麺類ですか」「はい」
すると別の方が、
「じゃ、カレーライス」
「え?」

西川 せめてカレーうどんやったらなあ(笑)
松本 「麺類で、さっぱりしてますー。じゃあ、わかる人~?」
「じゃあ、カレーかな」
「いやいやいや!」
芸人用語でこういうのを「かぶせ」って言うんですが、芸人よりずっとナチュラル。楽しいんですよ。こういうときに「カレー」っていった人がムッとすることってないです。利用者さんたちが参加することが一番いいのかな、って思って僕らはやっています。

--素敵ですね。レギュラーさんたちのように、介護にかかわるには、さまざまな形があると思います。介護にかかわる仕事をする方たちへのメッセージを

松本 僕らも、そんなに偉そうに介護を語れる立場ではありません。僕らは言うたら、(介護施設に)行って1時間、劇場のようにちょっと楽しい場所に変えるっていうことをしているだけ。
でも、いろいろ(な場所へ)行って気づいたんですが、若い人はこれまでのやり方を変えてやってはるんです。介護施設というと、利用者さんの嗜好に寄せていかなきゃ、という感じがあるかと思いますが、そんなことはないんです。
あるデイサービスでは、20代くらい若いスタッフばっかりでした。節分のときに行かしてもらったから、豆まきがあったんです。そのときに鬼ではなくて、「進撃の巨人」の、巨人の恰好して出てくるんですよ(笑)。で、その巨人に新聞紙を丸めたものを投げる。それってもう、スタッフが楽しんでやってるんですよね。

--おじいちゃんおばあちゃんは「進撃の巨人」を知らない方が多そうです(笑)

松本 そう。でも、なんや気持ち悪い人が来るから新聞紙を投げる。それが刺激になるんです。スタッフの人は楽しんでやって、おじいちゃんおばあちゃんは、知らない知識を得てる。これってホンマすごいこと、いいことやと思う。そうやって若い人は若い人なりに変えていける場所はあると思うんです。
西川 うん。そうだよね。ほら、老人ホームと幼稚園をスカイプでつないだりしてね。
松本 そうそう。幼稚園と介護施設をスカイプでつないで、施設では、映像で子供たちがお遊戯してるのを見られる、という取り組みをしているところがありました。お年寄りたちには、それぞれ担当の園児がいるんです。
で、あるおじいちゃんがその子を呼ぼうとして、「○○くーん」と声をかけると、先生が走り回ってる男の子を呼んで来るんですが、子供なんでぶっきらぼうなんですよ。
おじいちゃん「きょうは△△したん?」「どうやったん?」
男の子「…なに言うてるかわからへん」
それだけ言って、向こうに行っちゃったりする(笑)。でも、子供って本当に素直に生きてるから、それでいい。それも新しい試みですよね。
西川 今は、雀卓があるホームがあったり、いろんな機械や娯楽があったりする施設があります。だから、ホンマ若い人が、介護業界で変えていってくれるといいと思う。今までのやり方に合わせる必要はないよね。
松本 K-POPのことを教えてあげたりね
西川 うん、K-POPいいと思う
松本 ペンライトもって振るとか?
西川 うん。ええやん!
松本 いいですよ。運動にもなるし。
西川 女子高生が今のはやりの言葉を使うとかね。
松本 今やったらEXITやな
西川 チャラ系漫才やな。ええと思うで(笑)


レギュラー
松本康太(まつもと・こうた=1979年京都府出身)、西川晃啓(にしかわ・あきひろ=同)のお笑いコンビ。「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞、「NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞などを受賞。2014年に介護職員初任者研修を取得、次いでレクリエーション介護士2級を取得し、現在は「介護芸人」としても活躍中

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