「いつもの美容師さん」が生涯髪を切ってくれる社会へ=訪問美容師・湯浅一也さん<9>

2020/02/04

近頃、美容師さんに向けての講演やセミナーなどの際に、よく聞かれる質問があります。
「どうしたら、 一人一人のお客様を最後まで担当できるでしょうか?」
これには、高齢化が進むなか、街の美容室では何かしらの理由で、お店に来られなくなってしまうお客様が多い、という背景があります。
美容師さんたちは、来店してくださるお客様と、できる限り向き合いたい、つまり「生涯顧客」というキーワードに向き合っておられるのです。

一方、施設に入居されているご利用者様からも、似た言葉を伺います。
「いつも髪を切ってもらってた美容師さんにやってもらいたいな…」
この「いつも髪を切ってもらってた美容師さん」とは、施設などに入居される前に髪を切ってもらっていた、なじみの美容師さんのことです。

美容師というのは、お客様との信頼関係があって成り立つ仕事です。お客様が自分の髪質や好みをわかっていて、ステキなスタイリングをしてくれるおなじみの美容師に任せたいのは当たり前ですよね。ですから、私たちも一人一人のお客様に寄り添えるよう、美容師の「教育」に力を入れています。
今回は、弊社でスタッフの「教育」を担当している清野美保さんと話をしてみました。

株式会社un. 人事・教育部 清野 美保さん

■街の美容室とは違う「ありがとう」の重み

湯浅:改めて聞きますが、清野さんが訪問美容師を目指したキッカケは?

清野:以前は私も、「髪は美容室で切るもの」だと当たり前に思っていました。でも、入社する2年前ぐらい前、家族がお店に行けなくなって、自宅で髪を切ったんです。その時ふと「外出できない人って、いつも美容室どうしてるんだろう?」思いました。それで訪問美容の存在を知り、訪問美容師という仕事を考えるようになりました。

湯浅:それで「un.」に入ったんですね。実際に訪問美容師をやってみて感じたことや、心がけていることはある?

清野:当たり前ですが、ご利用者様と接するときは、「美容師=美容のプロとしての目線」を必ず意識しています。

ご利用者様も私を「美容のプロ」として見てくれているわけです。だからこそ、その方の個性を大切にしたいと思っています。

これは私の実感なのですが、訪問美容の施術後に、ご利用者様からいただく「ありがとう」という言葉の重みは、これまでお店で働いていた時とは違うんです。

だからこそ、「訪問美容だからオシャレじゃない」といったネガティブなイメージを変えていきたいです。

街の美容室と同じように充実したサービスができるようになった、今の訪問美容業界のことをもっと伝えていきたいと思っています。

社内講習中

■皮膚科の医師や介護福祉士さんによる講習も

湯浅:スタッフの社内講習をする際に意識していることは?

清野:訪問美容の現場に向かうスタッフの不安や疑問を、できるだけ取り除けるようにすることです。スタッフが不安なまま施術するのでは、ご利用者様も不安に感じてしまいます。

でもスタッフには、それまでの経験で培った、それぞれの技術やセンスがあります。それを訪問美容の場でもきちんと発揮するためには、新しい知識や技術が必要です。なので、訪問美容の理論や介護の知識などの講習を受けてから、現場に出てもらっています。

湯浅:これからもっと力を入れていきたいことはある?

清野:うれしいことに、意欲的なスタッフが多くて、今お話しした必須の講習以外の「課外講習」も、たくさん受講してくれています。

たとえば、頭皮や肌、髪の状態をよりきちんと知るために、皮膚科の専門医の先生にしていただく講習とか。ほかにも、介護福祉士さんやケアマネジャーさんに講師をしていただいたりもしています。

こういう機会には、さまざまな専門家の先生に、「その方から見た訪問美容」をお話ししてもらっています。それがスタッフのモチベーションアップにつながっているようですし、学んだことは翌日からの仕事に活かしてくれています。

常に学べる環境を整えることで、一人ひとりのスキルアップはもちろん、周囲の仲間に伝えていってくれれば、と思っています。

湯浅:どうもありがとう!

訪問美容の現場で私もいつも感じるのですが、まだまだ知らなかったり、足りなかったりすることも多い。学びたいことがたくさん出てくるんです。

もちろん、美容師として新しいスキルも常に磨いていかなければなりません。

と言うのはカンタンですが、実際はけっこうタイヘン。でも、新しいことを学び、それを仕事に生かせると、とても充ち足りた気分になるし、楽しいんです。

私たちはこれから、こういう講習を社外の美容師さんに受けてもらえるように、全国で開きたいと考えています。

そうしたら、いつか「いつも髪を切ってもらってた美容師さん」が、そのお客様を最後まで担当できる、ということが当たり前になるかもしれない。そんな未来をきっと実現させたい、と思っています。

・・・今日の大先輩の名言「相手に気持ちを言葉で伝える、というのは、物をもらうよりも最高のプレゼントよ」80代女性

湯浅 一也(ゆあさ・かずや)1987年1月31日 、札幌市生まれ。札幌ビューティーアート専門学校卒業後、2008年にStudio Vに入社。サロン勤務を経て2012年に株式会社 un.を設立。美容師国家資格・初任者研修修了2つの資格を持ち、訪問美容の現場でハサミを握り、美容学校や介護専門学校での講師活動やセミナー・講演、テレビや新聞・インターネットニュースなどにも出演するなど活躍の場は多岐に渡る。

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