美容師の大先輩にお会いして考えたこと=訪問美容師・湯浅一也さん<10>

2020/02/18

訪問美容を専門とする会社を立ち上げてから、早いもので7年以上が経ちました。
会社を立ち上げた当初から、私のなかで、お客様へのサービスの基準は以下のようなものでした。

「自分の両親に、自信を持ってサービスを受けてもらえるか?」
「将来、自分自身が受けたいサービスを提供できているか?」

今も基本的に、この基準は変わっていません。もちろん人によって求めるものは違いますが、根っこの部分では、両親に胸を張って勧められる施術、年を重ねた自分が受けてみたいサービス、それをいつでも「当たり前」に提供できることが大切だと思っています。

そんなことを考えていた折、美容業界の大先輩方がたくさんおられる場で、登壇させていただく機会を得ました。中でも目を引いたのが、美しい和装で会場の一番前の席に座り、熱心にメモを取られていた方。私が降壇すると、「高齢で外出が難しいお客様のカットを、その方のお宅でするにはどうしたらいいか」といった質問をたくさんしてくださいました。
美容師として、私よりもずっとずっと長いキャリアを積まれてきたであろう人の、学び続ける姿勢を目の当たりにして、改めて「当たり前のことを当たり前に」できる業界にしていきたい、と決意を新たにしました。

美容業界を変えてゆくことは私一人ではできませんし、弊社だけでも難しいでしょう。講演で熱心に質問してくださった大先輩をはじめ、業界の方はもちろん、より多くの方に訪問美容のことを知っていただくことがその一歩になると思います。そこで今回は登壇時の内容を、少しですがお伝えできればと思います。

登壇風景

■「訪問美容師になりたい!」心強いメッセージ

近頃、うれしいことにさまざまなメディアやセミナーなどに出させていただく機会が増えました。実際の現場のことを常に発信し続けることで少しずつですが、訪問美容業界が変化してきたように感じます。

例えば、訪問美容師を目標に、介護関連の仕事をしながら美容専門学校に入学する方がいたり、中高生の時から訪問美容師を目指すために理美容師の資格取得を考えている方々がいたり。こうしたことは、私が訪問美容師になった頃ではまず考えられないことでした。彼らの中には、SNSなどを通じて、「訪問美容師になるにはどうしたらよいですか」と、ダイレクトに私に連絡をくださる方もいて、とても心強く感じています。

サービスの内容も多彩になってきています。

かつての訪問美容の場では、髪を切るのに鏡すら置かないことも珍しくありませんでした。今は、お客様はもちろん、ご家族も施設の皆さんも、美容技術はもとより雰囲気作りを含めた質の高いサービスを求められます。

そこで、カットだけではなく、シャンプーやヘアカラー、パーマといった施術に加え、音楽やアロマの香り、インテリアの工夫といった五感で楽しめる空間づくりが行われることが徐々に浸透してきています。訪問美容に特化した美容室も増え、街にある美容室とまったく同じサービスを、そのまま施設などでも行う時代になってきました。

私たちは、髪の美容に限らず、ネイルやエステ、メイクなどのレクリエーションも提供させていただいておりますが、訪問美容をこれから利用される次の世代の方々は、こうしたサービスを日常的に受けてこられた方もたくさんいらっしゃるでしょう。ですから、お客様の「当たり前を当たり前に」提供できる訪問美容のためには、今後はより一層多様なサービスが求められるようになると思います。

ネイルを施術している風景

■意欲を取り戻すきっかけをつくる仕事

「街の美容室で受けられるサービスを訪問美容の場でも」というのが、私たちの理念であるわけですが、訪問美容だからこそ心がけていることがあります。

それは「個別ケア・自立支援」です。

「個別ケア」とは、一人ひとりに合わせた施術、サービスの提供。
「自立支援」とは、お客様がやってみたくなる施術やサービスを作ること。

そう、本来当たり前のことなのですが、この「個別ケア・自立支援」を私たちがプロの美容師としてしっかり意識すること、そのうえで一人ひとりの声に耳を傾け、その方の意思を尊重してサービスを行うことが大切だと思います。それができると、それまで部屋に閉じこもりがちだった方が「お洋服を買いに行きたい!」と話してくださる、といったことが起きます。

このように「〇〇したい!」という意欲をもっていただくきっかけを作れることが、訪問美容の大きな役目であり、私たちのやりがいでもあるのです。

私自身、現在も現場で多くのお客様と接するなかで、以前よりも心から美容という仕事が好きになりました。「美容のチカラ」は外見だけではなく、内面からお客様をプロデュースすることができる本当にクリエイティブな仕事だと感じています。

だからこそ日々勉強し、経験したことや想いを仲間や周りに伝えたいと思います。そうすることで、訪問美容業界が発展し、「高齢になっても、体が動かなくても、ニーズに応じて理容師や美容師を選べる」「安心安全なサービスがあたりまえに提供される」をつくることができるのではないかと思います。

・・・今日の大先輩の名言「思うほど人生は長くないから、仕事や好きなことを目一杯やりなさい! 」90代男性

湯浅 一也(ゆあさ・かずや)1987年1月31日 、札幌市生まれ。札幌ビューティーアート専門学校卒業後、2008年にStudio Vに入社。サロン勤務を経て2012年に株式会社 un.を設立。美容師国家資格・初任者研修修了2つの資格を持ち、訪問美容の現場でハサミを握り、美容学校や介護専門学校での講師活動やセミナー・講演、テレビや新聞・インターネットニュースなどにも出演するなど活躍の場は多岐に渡る。

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