「娘より友達が大事」な母 個性に合わせた介護ってある=柴田理恵さんの連載エッセー〈5〉

2020/02/19

■子供に教えるのが生きがい

12日に放送されたNHKの生活情報番組「ガッテン!」に出演させていただきました。
「寝たきり予防の最新メソッド」がテーマでしたが、うちの母も、90歳。
一時期寝たきりに近くなったこともあって勉強になりました。

父が亡くなった後も、生まれ育った富山で1人で暮らしている母ですが、
もともと小学校の教員をしていたこともあって、
今も知り合いがたくさんいます。
たとえば、介護施設に行くと、
「先生、私のこと覚えている?」って声をかけられる。
「私、もう施設に入る年だよ」って、
昔の教え子から言われたり。

母は、終戦直後に小学校の代用教員になって、
その後、通信教育で資格を取り、正規の教員になりました。

当時は戦争が終わって、日本全体が青春時代だったと思うんです。
母が子供のころは、戦争、戦争だったのが一気に解放された。
親のためや国のためじゃない、
自由な時代がきたんですよね。

若い先生たちが学生みたいに
夏、夜の学校に集まって、おばけ大会をしたそうです。
今では考えられないでしょ。

先生仲間と川に行って泳いだときの写真があるんですが、
水着なんて持って行ってないから、
男の先生はパンツ一丁で泳いでいて。
女の先生は、パンツとブラジャー。
母は、「ああ、楽しかった」って当時のことを話すんです。
大らかな時代ですよね(笑)

小学校の先生仲間とは今も付き合いがあって。
一緒に子供たちにお茶を教えています。
子供に教えることが母の最大の特技であり、生きがいなんです。

実は、父が亡くなって母が1人になったとき、
「東京に来る?」って聞きました。
でも、こっちの話を最後まで聞かずに
「絶対に嫌」
「私には友達が大事。あんたなんかより友達が大事」
「子供たちにお茶を教えたいし、習いにも行きたい」

はっきりした人でしょう?(苦笑)

若いころの母(須美子さん)と。眼鏡をかけた姿は親子でそっくりでしょう

■何よりも仕事が大事

私は東京で生活をしていますが、
富山での仕事もあって、だいたい1か月半に1回ほど故郷に帰ります。
そのとき、母の顔を見に行きます。
入院しているときや、体調が悪いとき以外、
母が普通に暮らしているときは、割と放っています。

今でこそ、毎日母と電話でしゃべり、お正月には帰省しますが、
お正月やお盆にちゃんと帰るようになったのは、
ここ10年程のこと。

私は東京に出てきて、大学卒業後、劇団に入り、舞台の仕事をするようになりました。
お盆はお芝居の仕事があったし、年末年始もテレビの仕事があった。
うちの母も、東京まで私に会いに来ることはそんなにはありませんでした。
「娘第一」の人じゃない。
「自分第一」の人なんです。

「お母さんはお母さんで忙しいから、東京に行く暇はない」って。

でも、その距離感がかえってよかったし、それは今も変わりません。

母が2年ほど前に急性腎盂炎で入院したときも、
私は変わらず、東京での仕事を続けました。
「介護のために仕事をセーブするのは、お母さんが一番嫌がること」
だったからです。

「何よりも仕事が大事」っていう生き方をしてきたのは、うちの親。
「仕事っていうのは責任もあるし、いちばんおもしろいことだ」
って教えらえてきたんです。
「仕事はちゃんとしられ(しなさい)、でも無理しられんな」って
母の方から言ってきます。

お互いが生きている環境を邪魔しあうのって
よくない気がするんですよ。
介護を通じてしか絶対に得られない何かってあるかもしれないけれど、
介護の関わり方も人それぞれでいいって思うんです。
個性に合わせた介護ってあるのかなあ。

親のすぐそばにいないからって負い目を感じる必要もない。
ただ、自分にできる最大のことは気を配ってあげた方がいいかな。
介護を受ける人が、楽しくいられるやり方ってある。

だから私も、母の望む限り、気力が続く限りは、
富山での暮らしを支えたいと思っています。

地元富山の人たちに支えられての遠距離介護を綴ります

テレビや舞台で大活躍する女優の柴田理恵さん。90歳になる母の須美子さんは、今も富山県で地域の方々に見守られながら、元気に一人暮らしをされています。長年、小学校の先生をされてきた須美子さんは、とにかく明るくて、気っぷのいい性格だそう。そんな須美子さんですが、2017年の秋に体調を崩して寝たきりになり、一時は「要介護4」の認定を受けたこともあります。そこからどうやって現在の元気な毎日を取り戻したのでしょう? 須美子さんの奮闘を励まし、見守った日々のほか、さまざまな思いを綴ります。

※第6回は3月4日に更新予定。

5月からWAHAHA本舗全体公演「王と花魁」に出演予定

しばた・りえ 1959年、富山県出身。明治大学文学部卒業後、劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、84年、WAHAHA本舗を設立。劇団の中心メンバーとして舞台で活躍するかたわら、映画やテレビドラマ、バラエティー番組、CFなどに幅広く出演。5月からWAHAHA本舗全体公演「王と花魁」(http://www.wahahahompo.co.jp/stage/koen/zentai/thegreatestkabuki/)に出演予定。

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