生ききるためのケア=抱きしめられて感謝される仕事

2019/12/17

特別養護老人ホーム(特養)への入所要件が、介護保険の要介護3以上に厳格化され、入所者の重度化が著しい。介護職には、「看取りケア」も身近な課題になっているが、どう受け止めているのだろう。

施設内に、手作りの作品が並ぶ。作り手の自慢とやりがいになる

■手製のモーニング

東京都板橋区の特養「音羽台レジデンス」では5年ほど前から、本人や家族の希望があれば、入所者を施設で看取るようになった。介護福祉士の藤田栄子さん(47)は、「本人が穏やかで、残された家族が満足だと、人生を全うされたと感じる。他の施設と違い、特養は入所者を最期まで看てあげられる。私が辞められない最大の理由です」と話す。

アパレルの社長を看取ったことがある。上背もあり、恰幅(かっぷく)もいい人だった。最期に着せたい衣装を夫人に尋ねると、「モーニング」だという。持ち込まれたのは、社長自身が仕立てたモーニングだった。エンゼルケアを施され、穏やかな顔の男性を見て、家族が「ここで過ごせて良かった」と言ってくれた。

日中は起こして生活する。アクティビティも1日のリズムを作る大切な日課だ

■アパレルのパタンナー

藤田さんは物づくりが好きで、以前はアパレルのパタンナーだった。だが、バブル後に量産化が進み、思い描いた喜びが得られなくなっていた。転身は20代後半。家族から資格のある仕事を勧められ、介護の専門学校に通い始めた。

介護の醍醐味について藤田さんは、物づくりの好きな人らしい回答をする。「相手にかけた言葉や対応が、パチッと〝はまる〟ときがある。それが充実感」

例えば、だれがケアしてもうまくいかない認知症の人。気持ちも荒れているが、ちょっとした表情やしぐさから要求が分かることがある。ケアが当たると信頼が生まれ、相手も落ち着く。勘所を見つける充実感は代え難い。

日々、時間ごとの入所者の様子を記入する介護日誌

■看取り介護

特養は他の介護施設に比べて、重度の入所者が多い。〝終の棲家〟とも言われるが、看取りができず、最期に病院に搬送する施設もある。

一方、看取れる施設では、担い手は大抵、介護職だ。看護職も常駐するが、死ぬことは、暮らしの延長線にある。必要なのは、介護職の力量、施設の覚悟、医療職との連携だ。

統括マネジャーの高橋寛昌さんによると、音羽台レジデンスも以前は「看取れない施設」だった。

成長のきっかけは、入所者の娘が看護師だったケース。「私が看るから、母を最期まで置いてほしい」と言われたのだ。

高橋さんは、不安がる介護職らと勉強会を重ね、「僕も泊まるから」と説得した。部屋で看取った後のお別れ会には、他の入所者も来てくれて、死を隠さずに済んだ。高橋さんは、「したことのない経験、感じたことのない感情。達成感や満足感があって、みんな、やりきった感があった」と振り返る。

特養の元施設長で、施設の経営支援を行う「エイジング・サポート」の小川利久代表は、「看取りは、人生を生ききるためのケア。看取れる施設では個別ケアが進み、介護職がやめなくなる。介護職は、家族から『あなたのおかげで看取ることができた』と、抱きしめられて感謝される仕事です」と話している。

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