100歳の自立を支援=あすならホーム

2020/03/08

重度化防止に取り組む介護事業所が増えている。立ち座りを訓練し、オムツにせず、家族の介護負担を軽減することで、要介護でも家で暮らし続けるのが狙いだ。ある介護職は、「以前は、オムツを替えることが介護の仕事だと思っていたが、全然違った」と笑う。

リビングには、高さや座面の奥行きが異なる4種類のイスが用意してある

■「イメージと違った」

施設内には臭いがあり、スタッフは流れ作業的に寝たきり老人のオムツを替える。介護職になる前は、それが介護だと思っていた。しかし、現場の光景は全く違っていた。

奈良県天理市の複合施設「あすならホーム檪本」の介護福祉士、中西智香さん(22)は、思い返して苦笑する。

2月上旬、明るいダイニングで、短期入所の利用者が、近所の人と焼きうどんを作っていた。フロアにある色違いのイスは、一脚ずつ高さや大きさが違う。合うサイズのイスを使えば床に足がつき、立ち上がりも楽になる。自立した生活を取り戻すには、環境を整えることが重要だ。

中西さんは、「以前は、本人ができないことを、代わりにしてあげるのが介護だと思っていた。今は、どうしたらできるか、一緒に考えている」という。

同ホームは、通所介護や短期入所のサービスを提供する。初日に利用者のオムツを外し、生活の中でトレーニングを開始する。本人のできる行為を奪わないのは鉄則だ。「危ないからと認知症の人から包丁を取りあげるのではなく、一緒に調理する。生活を継続するための『自立支援』ができる」と中西さんは、介護の醍醐味を語る。

近所のボランティアさんも交えて、みんなで焼うどんを作る

■10の基本ケア

ケアの柱が、同ホームの「10の基本ケア」。介護に必須の要素をまとめたもので、①換気をする②床に足をつけて座る③トイレに座る④あたたかい食事をする⑤家庭浴に入る⑥座って会話をする⑦町内におでかけをする⑧夢中になれることをする⑨ケア会議をする⑩ターミナルケアをする—。これが重度化を防ぐと評判になり、今では日本生活協同組合連合会系の複数の施設でも実践する。

中には、「夢中になれることをする」など、介護と無関係に見える項目もある。施設長の安部裕則さんは「おむつを外したその先に、受け入れられる生活があることが大切。理解されなければ、徘徊したり暴力をふるったりになる。それを抑えるのが介護だという考え方から脱却しないといけない」と解説する。

90代でベッドからの起き上がりができなかった人も、編み物や折り紙をする生活に戻った(あすならホーム檪本提供)

■100歳の生活リハビリ

100歳のある女性は、骨折での入退院後にホームを利用した。食事や排泄のたびに台に手をつき、立ち上がりを訓練すると、下肢と両腕で体の重みを支えられるようになる。ほぼ寝たきりだったのが、今は洗濯物を畳んだり、食器を拭いたり、編み物をしたりして過ごす。

中西さんは、「ここでなかったら寝たきりになっていただろう、という人もいる」と自信を見せる。これまでには、認知症の人に怒られたり、たたかれたりしたこともある。「へこんだし、思い悩んだこともある。でも、相手の昔の趣味などを探して、笑顔を取り戻せた。次はこんな工夫をしてみよう、と考えられるようになった」。成功体験の積み重ねが、今のやりがいにつながっている。

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