〝口コミ〟で介護。離婚もマイホームも♪

31 Oct 2019

介護現場には、「口コミで仕事を始めた」という人が少なくない。近所で働きたいというニーズもあり、特にママ友の誘いは有効なよう。軽い気持ちで介護の仕事を開始。離婚を達成し、マイホームも手に入れた女性に話を聞いた。

窓辺に飾られたピンクの造花が柔らかな雰囲気を醸し出す

■離婚してもいいように

埼玉県所沢市の社会福祉法人「桑の実会」で働く介護福祉士、羽太彼鶴(はたひづる)さん(54)は7年前、ママ友から「いつでも辞められるから」と誘われて、介護の仕事を始めた。

当初は乗り気でなかった羽太さんだが、非常勤から常勤になり、今は同法人の「グループホームこころ」のユニット長。「こんなに楽しい仕事はない」と笑顔を見せる変わりようだ。

実は羽太さんは、介護の仕事が初めてではない。ホームヘルパー2級(現在の初任者研修にあたる)の資格を取ったのは38歳のとき。動機は、「夫といつ離婚してもいいように」(羽太さん)だった。

しかし、その頃、働いた介護事業所は職場の雰囲気が今1つ。利用者から「私の人生は、こんなはずじゃなかった」と泣かれたのも受け止めきれず、一緒に泣き、2週間ももたなかった。

だが、夫の仕事は順調とは言えず、働かないと3人の娘を育てられない。倉庫で荷物係をしたり、ネット販売をしたり、生命保険の勧誘をしたり…。ガスの検針にも長く携わった。とにかく、「介護の仕事はしたくなかった」のだ。

入居者と談笑する羽太彼鶴さん(左)

■口コミの力

そんな羽太さんを変えたのが、桑の実会で働いていたママ友。

犬の散歩で会うたびに、「働かない?」と誘われた。「他の仕事があるから」と断ると、「ダブルワークでいい」。「介護の仕事に自信がない」と体験を打ち明けると、「だからいいんじゃない。入所者と一緒に泣ける人は少ない。そういう人がほしい」と口説かれた。

結局、3度目の誘いで決断。働き始めて、そのママ友が近所の人や友人をスカウトする達人だと知った。

「こころ」の守谷浩暁所長も、〝口コミの力〟に太鼓判を押す。「こちらは、どんな人か事前に分かる。向こうも職場の様子を詳しく聞ける。結果として長く働いてもらえることが多い」

その言葉通り、羽太さんも職場との相性は良く、働いてみると楽しかった。グループホームはこじんまりとしてアットホームだ。そんな事業所の違いも大きいかもしれない。「こころ」には、認知症の18人が暮らすが、至上命題は入居者を笑顔にすること。食事や入浴が遅れても気にせず、話す時間を大切にする。

壁には、入居者が描いた絵が壁に飾られている

■念願のマイホーム

受けたケアを忘れてしまう高齢者も、絶対に忘れないことがある。

「私の顔を見て笑ってくれる。根っこのところに、『この人は安心できる』という認識が残っているのでしょう。それが、とてもうれしい」

グループホームで働き始めてから夫と離婚。心機一転、念願のマイホームを買った。「シングルでは、家なんて買えないと思っていた」。だが、地元の金融機関には、地元の社会福祉法人への篤い信頼があったのかもしれない。ローン審査にすんなり通ったのだ。

介護は軽い仕事ではない。それでも、羽太さんは「笑っていれば何とかなる。笑顔の後に言葉がついてくる」と入居者に満開の笑顔を向けた。

◇グループホームとは

介護保険で要支援2以上の認定を受けた認知症の人が対象で、入居者の平均要介護度は2・76。住み慣れた地域で暮らし続けるためのサービスなので、同じ自治体に住所があることが要件。1ユニット9人、1事業所あたり2ユニットまでの小規模な住まいで、顔なじみのスタッフの支援を受けて家事などをしながら共同生活をする。

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