本質を追求した3つの手作り体験=翔月庵加古川(兵庫県加古川市)

2019/12/05

JR加古川駅からバスで約10分。「介護付き有料老人ホーム翔月庵加古川」(兵庫県加古川市)は、市役所や公共施設などが集まる市内の中心部に位置するアットホームな雰囲気の施設です。40室完備で入居定員は45名。この規模の施設ではめずらしく夫婦での入居が可能で、緊急時の短期ステイにも対応しています。

運営会社(株式会社シーナ、神戸市兵庫区)が創業20周年、そして施設が開設10周年を迎えたこの年(令和元年)、節目の年を記念して初めての外部のみなさんを招くイベントを計画しました。産経新聞社と介ホ協の共同企画「親子で一緒に介護のしごとイベント」の存在を知るとさっそく応募。周辺地域の小学生親子を中心に参加者を募集したところ、11月24日のイベント当日、親子6組12名が同施設にやってきました。

お仕事の後に入居者のみなさんとの喫茶タイム。高齢者と触れ合える貴重な経験でした

■アットホームで明るい

2020年5月に市内の別の場所へ移転が決まっている「翔月庵加古川」。運営会社の社長、糟谷有彦さんの両親がともに要介護状態に陥ったことを機に、平成21年、元々はビジネスホテルだった建物を改造してサービスを開始しました。やや老朽化こそ目立ちますが、館内からはいつも元気な声が聞こえてきて明るさがいっぱいのホーム。スタッフの笑顔が印象的な施設にこの日、12名の親子が初めて足を踏み入れました。

施設長の神吉(かんき)規美代さんが「こんにちは!」と大きな声で参加者を出迎えると、やや緊張気味だった子どもたちはたちまち笑顔になりました。玄関からほど近いデイサービスのフロアに促されるとそれぞれ着席。午後1時30分、いよいよイベントの始まりです。

服薬カレンダーにラムネのお薬を仕分け。完璧にできました!

■ラムネをお薬に見立てて

子どもたちがまず行ったのは看護スタッフ体験。とはいえ看護器具の類いは使用しません。デスクに用意されていたのは入居者のみなさんが実際に使用している服薬カレンダーです。

そして、その横には処方箋と、何やらお薬のようなものが・・・。よく見ると、ラムネやフルーツソーダやミニコーラなどなど。これらを本物の薬に見立てて、曜日ごと、朝昼晩に分かれたスペースに処方箋通りに詰め込んでいく作業です。プロの看護スタッフは30~40分で約40人分を仕上げてしまうそうですが、初めて体験する子どもたちは右往左往。それでも素早くコツをつかんだ子はわずか5分ほどで完了。正確に入れられているかお母さんの最終チェックでOKをもらうと「やったー」とニッコリでした。器用に〝お薬〟を詰め込んでいた蓑毛(みのも)愛羽(なるは)さん(小4)は「ふだんは整理整頓は苦手なんだけど、(服薬カレンダーのセットは)楽しくできました」と笑顔いっぱい。「(愛羽さんの)おばあちゃんの介護もそう遠くはないので」という理由でイベントの参加を決めた母の直子さんは「なかなかできない経験だし、楽しそうにやっていてよかった」と我が子を頼もしそうに見つめていました。

初めて車いすに試乗した女の子ら。まっすぐに押すのは意外に難しい

◆参加者が体験したプログラム

①看護スタッフ体験・・・「まるで本物」のラムネの薬を服薬カレンダーにセット

②ケアマネジャー体験・・・お母さんの困りごとを聞きながら、お手伝い計画書作り

③介護スタッフ体験・・・入居者のみなさんと喫茶タイム。子どもたちが注文、配膳を担当

入居者のプロフィル調査を模して、お母さんから困りごとを聞き取り調査

■お母さんを診断します

次に体験したのはケアマネジャーが行う入居者さんのプロフィル作りです。とはいえ、子どもたちにいきなり高齢者のプロフィル作りは難しいので、お母さんを入居者に見立てて、困りごとをききながら、お手伝いの計画書作りがミッションでした。

「車いすに乗ってみたかった」とこのイベントに興味を持った辻本悠華さん(小4)はさっそくお母さんの絵里さんにヒアリングをしてみると、何と「最近(悠華さんが)早く起きてくれない」と悩みを吐露されてしまいます。毎朝午前7時35分には登校しないといけない悠華さんですが、いつも7時15分まで寝ているのだとか・・・。それでも自らお手伝い計画書にしっかりと困りごとを書き込んだ悠華さんは体験後の発表会で「これからは早く寝てお母さんを困らせないようにしたい」としっかり約束しました。

入居者から飲み物の注文を取りもきちんとできました

■入居者と触れ合う

続いて12名は施設の2階にあるラウンジに移動します。3つめの体験は、実際に入居者たちとふれあう介護スタッフ体験。各階の自室からやってきた入居者のみなさんから好みの飲み物の注文を取ります。ふだんはなかなか高齢者と触れ合う機会がない子どもたちはおそるおそるおじいさん、おばあさんたちに声をかけてみます。中には耳が遠い人もいて、なかなか言葉が通じません。それでも頑張って精一杯大きな声を出すと、高齢者たちはみな笑顔で「かわいいね」と応えてくれました。スタッフの指示に従って、入居者の元へ上手くコーヒーを運べた長谷真央さん(小4)は「こぼれそうで怖かったけれど、慎重に運びました」と安堵の表情。高齢者から「ありがとう」と言ってもらうと思わず笑顔がこぼれました。

お仕事のご褒美に糟谷社長から〝給与袋〟を受け取る女の子

■スタッフもワクワク

器具などを使わず、実際の介護現場で行っている業務を中心とした子ども向けにアレンジしたユニークなプログラムを考案したイベント責任者の山端涼太さんは「老人ホームは閉塞的なイメージがあるので、介護にふだんなかなか関わることがない小学生らに何かきっかけを作り、実際の現場を見てもらいたかった」と今回の企画の意図を説明。その中で「(子どもたちが)自分たちの生活に繋がる、家に持って帰れるプログラム作り」にこだわったといいます。

その結果、参加した6組の親子はみな楽しそうな表情で体験中は常に笑顔。子どもたちには本物と同じスタッフ証を作り、イベントのラストにはお仕事の報酬として、糟谷社長から1人1人〝給与袋〟が手渡される粋な演出まで準備し、満足度いっぱいのイベントとなりました。「企画段階からワクワクして、職員もみんな『コレ面白いやん』とテンションが上がり放しでした」と山端さん。参加者、スタッフ、入居者が一体となって完成させた手作り感満載の企画はほぼ〝シナリオ〟通り。別のスタッフは「いいきっかけとなりました。今後もやりたい」と話し、初の試みでも大成功となりました。

介護付き有料老人ホーム 翔月庵加古川

住所:〒675-0017 兵庫県加古川市野口町良野1762

開設年月日:2013年11月1日(高齢者住宅部分は2009年)

定員/居室数:45名/40室

問い合わせ先:TEL:079-422-0417(月~金 午前9時~午後6時)

施設長からひとこと:鳥が飛ぶ姿を表す意味などがある「翔」という字。元々光を発する太陽のような存在であった方々が、ご家族や周りの方からの光を集める「月」のような存在になられた後にも、もう一度大きく羽ばたいていただきたいとの想いから命名しました。

翔月庵加古川では、常に「もし自分の親や兄弟だったら・・・」という視点を心がけ、周辺の医療機関と協働し、ご本人らしい生活の実現へ向けたケアに取り組んでいます。

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