「きれいになりたい」で自立支援

25 Nov 2019

介護の仕事で真っ先にイメージされるのは、食事や入浴などの介助。だが、日々の暮らしは、こうした生活行為だけで成り立つわけではない。ある介護付き有料老人ホームは、化粧を通じて気持ちを明るくし、身体機能の維持にもつなげようと取り組んでいる。

「やっぱり赤が似合うね。きっと映えるよ」

介護付き有料老人ホーム「ファインケアガーデン清瀬」(東京都清瀬市)の施設長、奥津朋子さん(41)は、入居の女性に赤い口紅を引いた。眉毛を描く女性の鏡を持ってあげたり、お勧めのアイシャドーの色を教えたり。「あら、どこの美人さんかと思った」「いい笑顔だね」ー。動き周り、声をかけ、メークをサポートする。

「化粧は日常生活でも行われている。ここでも、ご家庭と同じ生活を送ってもらえたら」と話す。

「きれいだね」「似合うね」と奥津さんの声が響く

■お化粧で行動的に

ファインケアガーデン清瀬では月1回、レクリエーションの1つとして、資生堂の化粧療法を取り入れたセミナーを行う。スキンケアやメークを楽しみながらADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の維持・向上を目指す。「お化粧をしてあげる」というより、「残された機能を生かして、できることは自分でできるようにサポートする」のが特徴だ。

奥津さんは、ホームでのレクリエーションのマンネリ化を感じていたときに、この化粧療法を知り、2年前には「資生堂化粧セラピスト」の資格も取った。「介護は起きる、食べる、トイレ、お風呂などが中心になりがちですが、生活はそれだけではない。その上に成り立つものも大切」と話す。

「きれいになりたい」という気持ちは、人の行動を変える。ある90代の女性は意欲に乏しく、食事時も自分で食べられるのに、介助に頼っていた。だが、眉用ペンシルを渡すと、自分で眉毛を描き始めた。奥津さんは「びっくりしました。きれいになりたい気持ちで、残っている機能がこんなに動くとは思わなかった」と振り返る。

お化粧の後は、みんな自分の姿を見て笑顔になる。「その笑顔を見るのが一番の楽しみ。お化粧ができて誰かに会いに行こう、何かをしようと思う力は大事」と奥津さん。

月に1回のメークセミナーを、利用者も楽しみにしている

■周囲の理解で働きやすく

そんな奥津さんだが、介護の仕事を一時、離れていたこともある。

短大の社会福祉学科で学び、新卒で介護職として働いたが、結婚を機に退職。2人の女の子を育てながら家業を手伝っていた。だが、「人と接する仕事がしたい」との思いが高まり、7年前に再び介護の仕事についた。子供の迎えのない日に夜勤を入れてもらうなど職場の理解にも助けられた。

4年前から「ファインケアガーデン清瀬」で生活相談員として勤務。管理者、施設長とステップアップしてきた。奥津さんは「職場には、子育て中のスタッフも多い。家庭優先で、急な休みにもフォローしあう態勢がある。家庭が安定していると、職場でのケアも満たされる」と笑う。働く側が楽しく仕事に向き合えることが、充実したケアにつながる、と信じている。

フォローすると、定期的に
\ケアするWebマガジン『〜から』の更新情報が届きます。/

『〜から』公式LINEに登録 Facebookページをフォロー
Share
LINE