「カメラは手放さない」=91歳のアマチュア写真家 西本喜美子さん

04 Sep 2019

 ユーモアあふれる自撮り作品が世界で注目を集める91歳のアマチュア写真家、西本喜美子さん。元気の源は、趣味の写真と、写真を通じて知り合った多くの年下の友人たちだ。いつも絶えない笑顔に、周囲から「かわいい」と愛される西本さんは、「どうしたら面白い写真を撮れるか、考える毎日が楽しい。たくさんの友達に囲まれ、私は幸せ者」と目を細める。

自宅の一室に設けた撮影スタジオで作品づくりをする西本喜美子さん。雑然として見えるが、「このままが使いやすい」という

■一人暮らしのスタジオ

熊本市内の住宅街。エレベーター付きの2階建て一軒家に、西本さんは一人で暮らす。「寂しいと感じることはあまりない。塾の友達が全国から遊びに来てくれるし、いつでもメールで話ができる」

「塾」というのは、西本さんの長男でアートディレクターの西本和民さんが市内や全国7都市で主宰する写真教室のこと。西本さんは72歳のとき、和民さんの教え子に誘われて通い始め、写真に目覚めた。時代がフィルムカメラからデジタルカメラに変わってからは、パソコンの画像処理ソフトも学び、使いこなす。

セルフポートレート作品が有名な西本さんだが、実は花や小物などを光の加減で幻想的に写し出すテーブルフォトが作品の中心。自宅の一室に設けた撮影スタジオで、気の向くままに創作活動に没頭する。

疾走感あふれる西本喜美子さんのセルフポートレート作品(本人提供)

■「環境づくりが大切」

西本さんは、父親の仕事の関係でブラジルで生まれた。8歳で帰国し、戦争を経験。美容院経営や競輪選手を経て27歳で結婚。84歳で夫を亡くした。

写真を始めてからの西本さんについて、和民さんは「笑顔が多くなった。写真を撮るには頭を使う。どうやって撮ったのだろうと思わせる作品も少なくない。たくさん考えるようになったことが、いい影響を与えている」。西本さんも「何事もやってみなければ分からない。写真を撮るのも楽しいし、何より友達が増えたのがうれしい」と語る。

和民さんは同居をあえて避け、車で20分ほどの場所に住む。「一緒に住めば、母は私に気を使うし、ストレスにもなる。年を取っても元気でいてもらうには、自由な時間を持ち、問題が起これば自分で考え、どうにか解決していく環境づくりを家族がすることが大切だ」と和民さん。

 

西本喜美子さんのセルフポートレート作品。仏壇に合掌する姿を「空中浮遊」に仕上げたところがユニークだ(本人提供)

■周りからもらう幸せ

以前は作品づくりのために外出することも多かった西本さんだが、腰を痛めてからはほとんど機会がなくなった。それでも、写真教室や、リハビリがてらデイサービスに通うなど忙しい毎日を過ごす。大好きなたばこや酒も、元気の源かもしれない。

最近は、耳が聞こえにくくなったと感じることもあり、写真教室の定席を新入生用の最前列に変えた。「先生(和民さん)の話が聞こえやすいように」だ。

「年は取りたくない。でも、周りから幸せを頂いているので、『まだまだ頑張ろう』という気持ちになれる。いずれ寝たきりになるかもしれないが、天井くらいは撮れる。だから、何歳になってもカメラは絶対に手放さないの」。西本さんは、ほほ笑んだ。

西本喜美子さんのセルフポートレート作品。鳥とたわむれる天使のような姿が「かわいい」と評判に(本人提供)

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